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​Introduction

今回の個展ではメタモルフォーゼをテーマに蝶々のように生まれ変わっていく感情や心を描き写した作品を展示します。多くの作品は御伽噺を題材にしていますが、私の絵の中の主人公は従来のような性別や人種、地位による設定や運命に縛られず美しく変化します。これらの絵は、窮屈な世界に閉じこもっていた私が絵を描き始めて自由になれた経験をもとにしていて、オーディエンスも自分自身を絵の中に投影し、抑圧から抜け出せるような物語になっています。誰もが自分自身の物語の中で蝶の魔法みたいに自由に変身できることを願って制作しました。

序章/ Preamble”
2021, 27.5cm x 16.5cm, colored pencils on paper

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心の中で、気持ちは蝶のようにふわふわと、次々と変化しながら飛び回ります。今回展示する作品たちはその儚くて脆い蝶々ひとつずつを丁寧に美しい標本にするように描き写したものです。この序章から始まる作品集は、小さくうずくまった蛹のような主人公が羽化し蝶々へと変身していくメタモルフォーゼを表しています。


 

アンカー 1

“機械人間 / Humanoid”
2021, 33.4 x 21.2cm, colored pencils on panel

私の学校はみんな同じのヒューマノイドを製造するロボット工場ですが、いい子のヒューマノイド製造過程ではよく製品の心の不具合が起きました。『いい子』になります、とみんな揃って復唱する中で、『いい子』の正しさに疑問を持ったヒューマノイドがだんだんおかしくなってしまうのです。その規格外のヒューマノイドは自分の鉄の体の奥に、『いい子』ではない本当の自分の心を探します。

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“ 裂咲怪獣 / Sakisaki Kaiju”

2020, 33.4 x 24.3cm, 

colored pencils on paper

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裂咲怪獣はいい子を喰らう怪獣です。大人は感情を抑える子供達をいい子と呼びますが、咲裂怪獣にとっていい子ではありません。裂咲怪獣は、大人の子供達への理不尽な扱いに怒って、感情を抑え込んでいるいい子を引きちぎって食べてしまいます。そして抑圧された子供達の大切な感情を彼らのかわりに大事にお腹にしまいます。大人には残虐なモンスターですが、いい子でいることに苦しんでいる子供には、悲しみから救ってくれるスーパーヒーローです。

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“マンディ/ Mandy”

2021, 27.3 x 22cm, colored pencils on paper

マンディはジュリー・アンドリュースの童話『マンディ』の主人公で、孤児院で暮らす短くおかっぱに髪を切った聡明で可愛らしい子です。空想の世界を夢見て暮らしていましたが、孤児故にときどき心にぽっかり穴が空いたような寂しさを感じていました。しかし不安や心細さに耐えながら夢みるだけではなく、夢を現実にする行動力のあるマンディは自分の望む人生を追い求めます。彼女の勇気ある行動は気づかないうちにマンディの周りに幸運を呼び寄せていきます。

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“人魚姫 / Seiren”

2020, 41 x 31.8cm, mixed media on panel

悲しみに暮れた人魚姫の泳ぐ涙の海で、運命は人魚姫を水の泡に変えようとします。けれど、人魚姫の側には彼女の手を握って支えてくれる大切な味方がいて、人魚姫は理不尽な運命に逆らって有毒な涙の海でもがき続けるのです。

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“ハンの冒険記 / The Adventure of Han

2020, 41 x 27.3cm, mixed media on panel

ハンさんは冷静、謙虚、かつユーモアを持ち合わせた私の敬愛する先輩で、彼女の作る作品はいつも青い炎のような情熱を纏っていました。彼女の制作は、まるで未知の世界で新しいものを見つける旅で、ハンさんは冒険家のようなのでした。

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“私をみて / Look at Me”

2020, 35 x 27cm, pencils on paper

メイクをして髪を染めてキラキラのピアスをした、私の好きな私は、私が今ここに生きた証を未来永劫残すために、私を美しい石の彫刻へと変えてくれるメデューサと会いたいのです。

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“Fragile”

2019, 30cm x 30cm, mixed media on canvas

私の友達のアナパウラは魅力的なダンサーであり、健気で凛とした子です。決して何があっても笑顔を絶やさず、私に笑いかけてくれました。足を怪我をして踊れなくなった時も、彼女は微笑んでいましたが、実際彼女の心は脆く、傷ついているようでした。傷を隠して私に笑いかける彼女は傷ついてなお美しく輝いて見えました。

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“鏡よ鏡 / Mirror Mirror Who Am I?”

2020, 41 x 27.3cm, colored pencils on panel

人はときどき周りの目を通して自分自身の特別を見つけます。けれど周りの評価がそのまま自分の評価になってしまったとき、アイデンティティは失われ蜘蛛の巣に絡まった蝶のように自由を失ってしまいます。本当の自分は美しく着飾った表側ではなく内側にあって、それを見つけたとき絡まった蜘蛛の糸は解けるのだと思います。

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“白雪姫 / Snow White”

2021, 38 x 45.5cm, colored pencils on panel

白雪姫は元来、毒林檎を食べさせられて、王子の助けを待つ受動的な存在です。白雪姫の運命は女性であるが故の不公平なものなのに、疑問を持たれず童話として受け継がれてきました。しかし白雪姫の運命に不満を持った私が作り変えたお伽話の中で、白雪姫は人種や性別、地位にとらわれず、毒林檎を投げ捨て自ら人生を変える力を持っています。また、この絵の中の白雪姫は、白雪のような白という周りから決められた色に縛られずにカラフルで、白と黒や正義と悪の二極に分けられたつまらない世界を色鮮やかに塗りかえる能動的な主人公です。

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“私の手 / My Hands”

2021, 28.5 x 22cm, colored pencils on paper

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“花束 / Bouquet”

2021, 33.4 x 24.3cm, colored pencils on paper

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“アイビー / Ivy”

2021, 37 x 42cm, colored pencils on paper

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“にこにこ雲” 

2021, 24.5 x 45cm,

colored pencils on paper

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“蛇 / Snake”

2021, 49.6 x 37.2cm, colored pencils on paper

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“宝石箱”

2019, 33.4 x 24.3cm, color pencils on panel

私はどこにいく時も過去の私をスーツケースに入れて肌身離さず連れていきます。今の私は、過去の私の経験や記憶で形作られていて、辛い記憶も甘い記憶もすベてが私を構成する大切な欠けらなのです。私の思い出たちは一つ一つが宝石のようで、私の心を宝石箱のように輝かせてくれます。宝石箱の中のそれぞれの思い出を描き写した私の作品たちは、変わりゆく私のメタモルフォーゼの宝石でもあります。

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“銀河鉄道の夜 / Campanella”

2021, 45.5 x 53cm, colored pencils on panel 

私が日常を過ごしている傍らで、知らない誰かが自死を選んだと知ると自分の非力さを痛感します。私はその誰かの悲しみ、苦しみや決意を知ることもできないまま関わることも出来ず、ただ駅のアナウンスやテレビのニュースでその人の死だけを知るのです。無力な私は何も出来なかったけれど、せめて勇気ある決断をした彼らに供える菊の花のような絵を描きたいと思いました。勇敢にも線路へ飛んだ彼らは今はもう辛い思いなどせずに美しい銀河鉄道に乗っていると私は信じています。夜に走る銀河鉄道は死を乗り越えた様々な生き物たちを乗せ、空を駆け、輝く天の川を渡ります。私の描いた菊の花はお彼岸に届きはしないけれど、枯れることなくずっとこの絵の中で咲き続けます。

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“ 魔法少女 / Stray

2021, 33.4 x 21.2cm, colored pencils on panel

人間界でいつも迷える人間たちは迷子にならないように気づけば鎖でぐるぐる巻きにされて、心も体も自由に動かせないようになってしまいました。強く美しい魔法少女は不思議な力を使ってそんな私たちの心を縛る鎖を解いてくれます。私が魔法のように誰かの心を救うことは難しいけれど、ステッキの代わりに色鉛筆を握って絵を描き続けています。

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“鍵泥棒 / Little Thief”

2020, 67.5 x 44.5cm, colored pencils on paper

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“心の鱗”

2021, 23 x 17cm, colored pencils on paper

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“勿忘草 / Forget-me-not”

2019, 60 x 45cm, mixed media on canvas

私の祖父との思い出は心の温まるものばかりです。物知りで、頑固で意地悪だけれど、孫に甘い祖父が好きでした。そんな祖父も時と共に老いて、認知症を患いました。だんだん薄れていく祖父の中の私の記憶をどうにか引き出そうと、私は一緒に行った動物園や、一緒に出た運動会を覚えているか尋ねましたが、返事はどんどん曖昧になっていくばかりでした。その返事を聞くことを恐れた私はただ隣にすわっていました。そしてついに、祖父はお前はだれだと私に尋ねるようになりました。私の中の祖父はずっとあのときのまま変わらないのに、祖父の中に私はもう生きていないのでした。祖父の中の私が忘れさられても、私はこの記憶を絵に残してずっと愛しい思い出と共にいることに決めました

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“花束 / Bouquet”
2021, 33.4 x 24.3cm, colored pencils on paper

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アンカー 2
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