SPEECH BALLONS IN THE VINUSと21世紀のダンス
中村ケンゴ / Kengo Nakamura
2007年11月6日(火)- 12月1日(土)
この度MEGUMI OGITA GALLERYでは、11月6日より12月1日まで中村ケンゴの<スピーチバルーン・イン・ザ・ビーナスと21世紀のダンス>を開催することになりました。
中村ケンゴは1969年に大阪で生まれ、多摩美術大学で日本画を学び、1995年に同校大学院美術研究科修士課程を修了いたしました。1994年より発表を続け、2004年に西村画廊で行われた町田久美との「日本画二人展」、2006年に横浜美術館で行われた「日本X画展(にほんガテン)しょく発する6人」での展覧会より近年注目を集めます。
1994年より発表し続けている作品は現代的な問題をポップな色調と、グラフィカルな表現によって描いたものです。初期より続くスピーチ・バルーンのシリーズは名画のシルエットをマンガの吹き出しで覆った作品で、今見ても新鮮で画期的なものでした。またコンポジション・トウキョウのシリーズは年のワンルームマンションの間取り図に、赤青黄の色彩を施す事で、モンドリアンのコンポジション絵画を彷彿とさせながらもユーモアとシニカルを感じさせます。
ポップな下地に「Re」の文字を描いたシリーズでは、返信メールによるReの増殖はポップなカラーの服装を纏う年の若者達の、中身のないメールでの対話イを表しています。サラリーマンのシルエットにマンガの吹き出しを文様化して重ねたスピーチバルーンマンのシリーズは形式化された上辺だけの付き合い表しているようにも見えます。
中村のこれら一連の仕事は一見バラバラのようでありながら、一貫したものがあります。学生の頃より日本画を学んだ中村は常に日本人にとって美術の意味を自身に問いかけてきました。現代を生きる自分にとってリアルな感覚を、様々なメディアより引用し、自分の絵に取り込んできたものは、孤独な現代人の何もかもを受け入れられる多様性を持ちながらも、人と同一でありたいと願う心理です。
アメリカの抽象表現主義の絵画を思わせるようなオールオーバーな画面の「自分以外」のシリーズは手塚治虫の名前もないような脇役のシルエットを画面全体にちりばめ、そこにいるのは自分にとってその他大勢の人たちですが、その人から見た自分もまたその中に含まれるという事を考えさせられます。しかしそのような社会性は彼が自然と感じとった事象であり、特筆すべきは中村が大切にしてきた日本画の素材と技法で描かれた静謐で美しい作品の仕上がりです。