2019.11.26 (Tue.) - 12.14 (Sat.)
11:00am - 7:00pm(Closed on Sun., Mon. and public holidays)
Opening Reception 11.26 (Tue.) 17:30 - 19:30
積み重なった物語 / The Layers of Stories
"石ー女" 2018, 40 × 50 × 2.7cm, silk embroidery on silk cloth
"こいぬ座" 2017, 7.5 × 12 × 1.7cm, silk embroidery on silk cloth
"雨の花" 2017, 22 × 27.5 × 2.3cm, silk embroidery on silk cloth
MEGUMI OGITA GALLERY 東京都中央区銀座2-16-12銀座大塚ビルB1
この度メグミオギタギャラリーでは、約3年ぶり、5回目となる蝸牛あや新作個展「積み重なった物語」を開催します。
蝸牛は2001年に多摩美術大学彫刻科を卒業し、刺繍作品の発表を続けてきました。
古来より刺繍は、家族をはじめとする共同体、あるいは個人に対する魔よけやお守り、祈りの象徴として受け継がれてきました。日本においては飛鳥時代に聖徳太子の死を悼んで制作された天寿国繍帳が最古の遺品として広く知られています。洞窟壁画や装飾古墳に見られるように、描くことや装飾は、自然と共に生きるために必要な祈りだったのです。
しかし大量生産と情報化の現代において、純粋な祈りを形にするための手段としての刺繍は姿を変えつつあります。蝸牛は、現代において形式化した祈りを、一針一針思いを込めた刺繍作品を通じて、その本質へと導きます。温もりある手の痕跡から成る蝸牛の刺繍作品は、時代や環境の変化を超えたところで普遍的に存在する、我々人間の悲哀や喜びといった感情に優しく寄り添います。
「海で見つけた巻き貝、川で拾った小さな石。
自然が作った形、色、模様を追って、そこにあったはてしない時間の物語を想像する。
糸は、生地の裏表を行き来し、その瞬間の空気、気持ち、時間を縫い留める。」
今展では自然物からインスピレーションを得て制作された、新作約20点を展示します。展覧会名は、アンソニー・ドーアの小説「すべての見えない光」から名付けられました。
「自然には正しいことがあり、学びたいと願うから」と話す蝸牛は、ほとんどの作品に素材として絹を用います。蚕が吐いた糸にはぬくもりがあり、柔らかく、生地は人の肌のように感じられます。また針を刺す音は呼吸に聞こえ、作業の中で作家は心地よさを感じています。絹は扱いが難しい素材でありながら、他にはない光沢や色の美しさ、力を持ち、詩的で洗練された作品の魅力を際立たせています。
多くの情報を知るばかりになった今日、想像すること、感じること、触れることなど、かつて私たちにとって必要不可欠だった行為は失われつつあります。これらの根源的な行為の重要性を、作品を通して再認識する場になることでしょう。蝸牛あやの新作個展「積み重なった物語」に是非ご期待ください。